指板はネックに貼り付ける前にフレットのためのいろいろな工程をしておくのがよい。例えば、サイドを削ってしまうとスコヤで直角を測ることができない。スコヤなどを使うためには、手を加える前の、しっかりと直線が保たれている方がよい。
フレットの間隔はスケール(弦の長さ)を入れると自動的に計算できるようにExcelで作ってある。スケールを12乗根の2の値(大体1.059463)で割ると、1フレット目、さらにその値を同じ値で割ると2フレット目、以下同じである。12フレット目はスケールの半分、24フレット目はスケールの4分の1になる。
フレットの溝を掘るのは、ずっと以前にStewMacで買ったフレット用ののこぎりを使っている。こののこぎりは、一定の深さ以上には切れないようにできる。スコヤをしっかりとあてて(固定して)フレットのこぎりで溝を丁寧に切っておく。
フォークギターとかエレキギターの指板はアールがついている(4図1のB) (1弦から6弦の方向に直線ではなく、やや湾曲するようにしてある。) 。 クラシックギターの指板は真っすぐである(4図1のA)。
今まで作ってきたギターの何本かにはアールの加工をした。手で握りやすいくらいの木のブロックで、中央部をへこませる。望みのアールになるように形を整える(4図2)。その部分に丁寧に両面テープをしっかりと貼り付け、そこに紙やすりを貼る。それを使って、丁寧に指板を削っていく。
しかし今はこれは面倒なので私はしない。演奏にも、問題はない。クラシックギターは指板の幅はもっと広いのに真っすぐで、それでも普通に演奏していることを考えれば、また実際に演奏していてもそれほど不便を感じないことから、また加工に手間がかかるし、さらに、フレットを打つ時もフレットを事前に1本1本丁寧に形をそのアールに合わせる作業も必要になることから、作業工程の面倒くささと、得られるメリットを考えれば、素人の趣味であればやる必要はないと感じる。ただし、趣味というものは、わざと手間と暇とをかけたくなったりもするので、あるいは、手間と暇をかけるのが趣味ともいえるので、アールをつけるのもよい。まさに趣味の問題である。
ネックがしっかりと真っすぐであれば、それに指板を貼り付ければよい。ネックがまっすぐでなかった場合、指板を貼り付けても、当然、トラブルの原因になる。そういう点で、貼り付ける前に丁寧にネックがまっすぐであるかを確認し、しっかりと調整してから張り付けるべきである。4図3は失敗した例である。Aのようにすべきであったのに、Bのように少しだけ段差がついてしまった。そして指板を貼り付けてしまった。当然強い力で。その結果、指板は変形して接着された。死の結果、1フレットや2フレットの部分で、逆反りのようになり、そのフレットだけビビってしまった。その後、大幅に指板を削りなおすことになってしまった。手間がとてもかかった。貼り合わせる前の調整がいかに大切であることか。
指板は黒檀など硬い木を使うのが普通だ。ただ、黒檀などはとても値段が高い。今まで、指板の木としていろいろ使ってみた。黒檀のほか、名前のわからない硬い木も使った。樫も使った。チークも使った。ラワンやアガチスも使った。プロとして演奏するのであれば別かもしれないが、素人はなかなか演奏する機会もないものだ。私は普通よりは演奏の機会がやや多いかもしれないが、どんな指板でも問題ないと感じている。ラワンやアガチス程度でも十分である。さすがに杉では柔らかすぎるかもしれないが。スギは、表板としては素晴らしい。また、作ったギターの本数が増えて、とっかえ、ひっかえ、いろいろなギターを弾けば、1本のギター当たりの演奏時間は減るので、指板にかかる負担も減るだろう。まあ、趣味なので、なんでもありである。
素人がギターを作る場合、手に入りやすい木材を使うだろう。もちろん、お金と時間をかけて素晴らしい木を手に入れ、作ることも可能である。でも初めて作るとかであれば、あまりにも高い木で作るのは失敗したらと思うと難しいだろう。また、自分なりの何かオリジナルなものを作りたいと思うだろうから、そういう点では試作品である。試作品には、とりあえず手に入りやすい木で作るのが普通だろう。試作品がうまくいったらさらに高い木で作ればよい。私は最近はホームセンターで買った木でほぼ何とかしている。ホームセンターで買うのは規格ものだ。それで十分だと感じている。以下、実際に作ったネックや指板について。
A:厚さ14mm、幅45mm、長さ910mmのラワン材
B:厚さ5mm、幅45mm、長さ600mmのアガチス材
C:厚さ13mm、幅45mm、長さ450mmのファルカタ集成材
ウクレレをネックはA、指板はBで作るのは普通に可能である。
ウクレレベースをネックはA、指板はBで作った。ウクレレベースはウクレレに比べればスケールは大きい(長い)。その分テンションがかかる。でも、ウクレレベースの弦は柔らかいので、テンションはそれほどでもない感じだ。
ウクレレをネックはC、指板はBで作った。ただし、ファルカタ集成材はものすごく軽く柔らかい。なので、ネックの形をたくさん削るのは避けたい。弱すぎるから。あまり削らずに使うのがいいと思う。また、スケールの大きな(長い)ウクレレには向かない。ソプラノウクレレでは実際に使ってみて十分だと感じている。スケールが大きい(長い)と弦にかかるテンションが大きくなり、その分、ネックの強度が必要になる。ファルカタでは弱く軽いので心配だ。
ウクレレのネックと指板を一体として樫で作ったが、十分すぎる。やや重くなった。
ウクレレの場合、厚さが18mmとか19mmくらいもあればなんとかなるように感じている。堅い木であればもっと薄くてもいい。15mmくらいまで削ってもいいかもしれない。しかし、ギターではこれでは薄すぎる。
D:厚さ14mm、幅60mm、長さ910mmのラワン材
E:厚さ5mm、幅60mm、長さ600mmのアガチス材
F:厚さ5mm、幅60mm、長さ600mmのチーク
ギターを、ネックをD、指板をEで作ったが、これは弱すぎた。薄すぎた。19㎜くらいでは弱い。なので、後でAの材を使って厚さを増した。(ちょうどそこにAの材の余っていたのがあったので。Dの材があればその方がよかったのだがなかったので。) 幅が狭いので、ボディ側のネックはカッコ悪くなるが。でも、自分で使うだけなら問題ない。でもこれでは、厚すぎる。かなり削らないといけない。
ギターをネックも指板もDで作ったこともある。指板としてはとても厚い。なので、形の点で普通でない感じもあるが、手に入りやすさ、工作の簡便さなどを考えると、試作品的な場合、最も適当かなと考えている。また、ネックや指板をFで作ったこともある。
厚さ12㎜くらい、幅60㎜くらい、長さ600㎜くらいの樫を手に入れ、ネックや指板として作ったこともある。黒檀を指板にしたこともある。手に入った、いろいろな名前の分からない木もネックや指板に使ったことがある。趣味なので、なんでもありである。
ネック・指板の厚さは強度につながる。クラシックギター(ガットギター)にはトラスロッドは入っていない。なので、ネックは強度のことを考えると厚くなる。エレキギターやフォークギターはトラスロッドが入っている分薄く細めにできる。素人が趣味で作るのであれば、トラスロッドの入手、手間、時間、加工の工程の多さを考えれば、多少ネックが太くてもいいのではないかと考えている。なので、トラスロッドの加工はしていない。ギターを作り始めて、もう、20年くらいたっているが、作ったギターで、ネックが変形しだめになったものはない。トラスロッドは使っていない。ただ、この加工を楽しむのも趣味のひとつだろうから、トラスロッドを入れても構わないと思う。ネックの太さと厚さはカポを使う時に問題になることもある。市販のカポが合わないことがある。市販のカポが何とか使えるくらいには薄くしたほうがいいとは思う。
ネックの強度はスケールにもかかわる。同じ弦で同じ音を出すには、長さが長いほどテンションを高めなければいけない。つまりスケールが大きくなるほどネックの強度が必要になる。なので、私は、トラスロッドを入れないという選択をしたので、スケールはやや短めにしている。最近はギターならば600㎜のスケールにしている。この辺も趣味の問題である。
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