2.アコースティックのボディ

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2-0 変形

弦によってギター全体がヘッド側とブリッジ・ブリッジピン側に強く引っ張られる。そのことによって変形する。その変形を防ぐことを考えないといけない。

どのように変形するか。もともとが図2-0-Aであったとする。力は図2-0-Bの矢印イ、矢印ロ、矢印ハ、矢印ニのようにかかる。ネックとボディは弦によって引っ張られ大げさに言えば、結果として、弓のように変形する (図2-0-C) 。図2-0-Bの矢印イ、矢印ロの力によって、図2-0-Cのようにネックが変形しているのを順反りという。わずかにネックが順反りしているのは良い。わずかに、だけれども。もしこれが逆側に反っていると、逆反りといい、押弦したときに弦が隣のフレットと触れてしまいビビってしまうことになる。

ブリッジピンからヘッド側のボディはへこむ。(図2-0-Bの矢印ハの力によって。図2-0-Dの☆の部分。図2-0-Eの線cの断面図の右側と線bの断面図の中央部分。) ブリッジピンより先は逆に盛り上がる。(図2-0-Bの矢印ニの力によって。図2-0-Dの◎の部分。図2-0-Eの線cの断面図の左側の盛り上がっている部分と線aの断面図の中央部分。) 弦方向の垂直方向のボディも変形する。図2-0-FのようにA方向、B方向とする。A方向でへこむ部分はB方向でもへこむ。A方向で盛り上がる部分はB方向でも盛り上がる。図2-0-Eのように変形する。つまり、ブレイシングはこれらの変形を止めるようにするために行うことになる。

2-1 ボディの形、ネックとボディの角度

図の2-1-Aのa方向にもb方向にも実際は膨らんでいる。表板も裏板も。これはブレイシングする材の形をこのように膨らむように加工してから貼ることによって行う。大げさに描けば図の2-1-Aのb方向は図2-1-Bのように膨らむ方に加工する。さらに図2-1-Cのaよりもbのほうが長い。図2-1-Cのボデイとネックとの接続の角度のままだと、膨らむと、図2-1-Dのようになる。すると弦高が高くなりすぎるので、ボディとネックはやや角度をつけないといけない。そして図2-1-Eのようになる。極端に描くと。

ただし、趣味で作る分には、膨らませるために手間がすごくかかる。膨らませることの手間だけでも作業量は大幅に増えるだけでなく、そのように膨らませたものをぴったりとくっつけなければならない。そこでまたとても手間がかかる。素人が趣味で作る範囲ならば、膨らませなくても十分楽しめると思う。

2-1-2 エレキのボディとネックの角度

図2-1-2-Aのようなタイプと(極端に描けば)図2-1-2-Bのようなタイプとがある。さらに、ネックがボディを貫いて、つまり、ネックとボディとが一つながりの木でできているものもあり、スルーネックといわれる。ただしスルーネックであろうが、ネックとボディをボルトで止めるタイプ(ボルトオンネック)であろうが、ネックとボディを接着するタイプ(セットネック)であろうが、角度の点で言うと、図2-1-2のAかBである。角度がついているか、平行であるかのどちらかである。



2-2 ブレイシング・板の厚さ

ボディが、2-1で述べたように膨らんだ形になるようにブレイシングをする。ブレイシングの目的はさらにある。

ボディにブレイシングがないと、簡単にボディは変形する。それを防ぐのが表板や裏板の裏側から張り付けるいろいろな木。これがブレイシングである。どのようにどんな形で、張り付けるかがとても重要。また、表板は共鳴の点でもものすごく大切なので、ブレイシングによって音は変わる。一般的には、ブレイシングが多いほど丈夫になるからよいが、共鳴の点ではよくない。共鳴しやすい音域も変わる。なので、なるべく丈夫に、ということと、なるべく鳴るようにというのは、たがいに反する要求にもなる。なので、そのバランスがとても大切。

同じく、板は厚いほど丈夫だが、鳴りは悪くなる。薄いほうがよいだろうが、弱くなる。

2-0で述べたような変形を防ぐこと、2-1で述べた膨らませることが、ブレイシングの目的となる。ただし、2-1の膨らませることに関しては、趣味で作る範囲であるならばやらなくてもよいと思うが、一方、膨らんでいるとより本物っぽくなる。この辺は趣味なので、考え方次第である。変形を防ぐという意味では、図2-0-FのA方向も、B方向もブレイシングで補強する必要がある。

ただし、三線の構造を参考にすれば、ブレイシングへの考えも大きく変更が可能となる。(3-2へ



2-3 アーチトップのように、テールピースで弦を止める場合

変形についてさらに考える。アーチトップのように、テールピースで弦を止める場合、変形は少し異なる。

アーチトップのボディの端からブリッジまでの距離が長い場合、弦がブリッジをしっかり押さえることができなくなる可能性が高まる。なので、この辺は設計時に丁寧に考えておかないと失敗する。

アーチトップはアーチトップというくらい盛り上がっている。2-1で述べたように、アーチトップは図2-3のようにボディとネックは並行ではなく少し角度がついている。

アーチトップの場合、テールピースが弦とつながっているので、ボディの変形はブリッジ部分でへこむ方向に力がかかることになる。図2-3の矢印のような力が働く。(図2-0-Bの矢印ニの方向の力はない。図2-0-Dの◎印の盛り上がりもない。図2-0-Eの線Cの左側の盛り上がりのような力は働かない。)

ブレイシングがいまいちだった自作ギターの変形(図2-0-E の線Cのような変形)が大きくなってきてこのままでは壊れると思って、テールピース的な形に弦を張るようにして、それ以上の変形を防いだことがある。

2-4 裏板とボディの接合

もちろん接着するのが普通だとは思う。今までの自作ギターも接着したものがほとんどだ。しかし。自作の場合、いろいろああしよう、こうしようとついつい思うものだ。アコースティックだけど、コイルのピックアップをつけたり、ピエゾのピックアップをつけたり、さらに、現在は、サドル下に置くピエゾピックアップつきのイコライザー、チューナー、プレアンプ、も安く手に入るようになった。これらも自作派とすればつい使ってみたくなったりもする。電気的なものは故障とか、交換とか、回路変更とか、スイッチの増設とか、自作派はしたくなるものである。この時、サウンドホールからだけの作業は現実的ではない。なので、いろいろしたくなるだろう人は、裏板をねじ止めするのがよいと思う。ねじを外せば、いろいろな作業がしやすい。


2-5サウンドホール

サウンドホールは作る過程でとても大切だ。ギターの中央部分で何かを(ブレイシングなど)接着することはとてもよくある。その時固定するのにサウンドホールはよく使われる。いろいろなクランプを使う時この穴を利用する。また、出来上がった後、何かをするときもこの穴を通じて行う。そういう視点でもサウンドホールを考えておく必要がある。

サウンドホールを弦の真下でなく、ボディ全体の下方に設置したこともある。すると、弦が張ってある状態でもサウンドホールへのアクセスが容易である。普通のボーカルマイクをこのサウンドホールに入れると、かなりいい音を集音できる。結構気に入って、いくつかの自作ギターでは、わざとこのようにサウンドホールの位置をずらしているが、なかなか良い。またサウンドホールも二つとかも、結構よい。修理その他のことに関してもサウンドホールが2つあると、結構便利である。

自作ギターなど手作り大好きキホーテの部屋

自作ギター、手作りウクレレ、電子回路、ミキサー、Arduinoを使った時計、木工などいろいろ、作ったり、直したり。道具の使い方も。ギター作りなど、手作り大好きキホーテの発想と失敗と反省と教訓と喜びなどの記録。