「日米地位協定の現場を行く」を読んだ。そして、現在の入管の制度と比べて考えた。
米軍はアメリカ本土の基地から日本の基地の移動は入国審査なしで日本に入り、その後日本国内を自由に移動できる。どこへでも。いつだれが日本に来たかもわからない。1か月いるのか10年いるのかもわからない。住民登録の義務もない。住民登録しなければ当然住民税もとられない。行政側は、だれがいつどこに住んでいるかわからない。でも道路とか水道とかごみの収集とか、税金によって賄われるメリットは享受する。さらに、思いやり予算などで、米軍向けの住宅とか娯楽施設なども、日本の税金で建てられ維持されている。アメリカ本土の基地から日本の基地の移動、その後の日本国内の移動などで、沖縄ではコロナで苦しめられたのは記憶に新しい。同様に、日本に入り、日本国内で犯罪を犯し、基地から基地への移動でアメリカに帰った場合、いつだれが日本に出入国したのかさえもわからない。
一方で。
日本生まれ日本育ち、日本を一度も出たことのない外国籍で、仮放免の立場の人は、県をまたぐ移動さえもできない。(許可申請し、許可がおりれば可能。) バイトもできない。県境に近い場所に暮らしていたら、とても不便。例えば、東京都立光が丘高校のわきの道を100mちょっと歩くと埼玉県和光市。その道をさらに300mほど歩くとまた東京都。仮放免の人がこの道を不用意に歩くと入管につかまり収容されるということにもなる。東京近郊では、電車に乗ってちょっと寝過ごしたら、都と県の境を超えてしまうことはよくあること。これもいけない。仮放免の人は定期的に入管に行かないといけない。手続きに遅れたりしたら収容され強制送還されてしまうこともある。時には、一度も行ったことのない、その国の言葉を全く話せない母国に。あるいは帰ったら、命の危険にさらされる可能性が高い場合でも。
あまりにも違いすぎないか!あまりにも不平等ではないか!
米軍は、基地から基地へ自由に移動できる。陸上でも空でも。空の影響はとても大きい。沖縄の那覇空港付近は、旅客機は300mとか、300~600mの低空を飛ばないといけない。それ以上高度を上げることはできない。安全上問題があるが、それより上は、米軍の空だ。日本の空は日本が自由にできない。横田ラプコン、岩国ラプコン、嘉手納ラプコン。管制権は米軍だ。羽田空港に発着陸する民間機も実はとても大きな制限を受けている。
日米安保条約、日米地位協定、日米合同委員会は一応、知っていた。でも、日米地位協定合意議事録は知らなかった。安保条約にしろ、地位協定にしろ、不平等の部分がとてもある。さらに、旧日米安保条約時の日米行政協定の在日米軍の特権は、地位協定の本文ではなく、合意議事録にしたがって運用されているとのことだ。
不平等はたくさんある。たとえ民間の土地での米軍の事件・事故でも、日本の警察は捜査はもちろん、立ち入ることさえできない。裁判権もない。身柄引き渡しも同様。(アメリカ側の好意によって、できることもあるが。)
本書によれば、地位協定の運用の趣旨は、在日米軍に日本の法律の適用除外を認めることだ。在日米軍の①基地の使用、②訓練や行動範囲、③無理のない経費負担、④身体の保護、⑤税制、通関上の優遇措置、⑥生活を守るため、に、日本の法律を適用しないような仕組みが作り上げられている。
このままでいいとは全く思えない。
少しでもよりよい方向へ変化していくように、いろいろなことをじっくり考えなければいけないと思う。考えるためには、知らないといけない。
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