これは本当にいろいろである。それでも、一般的な形はあるので、実際に自作ギターにいろいろ試してきたことをもとに書いていく。基本的なことのみを書いておく。
(もっといろいろなことはエレキギターについては、私の持っているいくつかの本の中では、「エレクトリック・ギター・メカニズム完全版」武田豊著、RittorMusicMookの本が詳しい。インターネット上でもいろいろな情報が得られる。)
10-1 ピックアップについて
ピックアップ:音のもとを電気信号に変えるもの。
コイル・磁石のピックアップとピエゾ(圧電素子)のピックアップがある。人の耳とコイルのピックアップとピエゾのピックアップとマイクを比較してみる。
◎ 人の耳:空気の振動を音として聞く。
◎ コイルのピックアップ:鉄の弦の振動を電気信号に変える。原理は電磁誘導である。磁石の周りにコイルが固定されてあるのがピックアップ。ふつうの電磁誘導は、磁石が動くかコイルが動くかで電気が発生する。しかし、エレキギターなどのピックアップは磁石とコイルの位置関係は変わらない。周りにある磁性体(鉄の弦)の動きが磁界を変化させ、それによって、電気が起きる。これを電気信号として出力する。なので、ナイロン弦の振動は捉えることができない。ボディをたたいても、それを直接的には捉えることはできない。ボディを触れたりした時の雑音は拾わなくて済む。磁性体の弦の振動のみをとらえる。ボディの音への影響は、ボディが弦の振動に影響を与えることで起こる。間接的な影響のみである。コイルのピックアップが拾うのは空気の振動ではない。つまり、音を直接拾うわけではない。
◎ ピエゾ(圧電素子)のピックアップ:圧力変化を電気信号に換える。つまりピエゾのピックアップに伝わった振動(圧力変化)をとらえる。ピエゾのピックアップは、サドル下に置くもの、ボディのどこかに張り付けるものがある。どこにこのピックアップがあるかで音は大きく変わる。ボディを触れたりした時の雑音も拾ってしまう。ボディをたたいてもその振動をひろう。アコースティックギターのボディをたたいてパーカッションのような使い方をした場合、それも拾うことができる。コイルのピックアップではこのようなことはできない。振動をとらえるため、振動する楽器ならばどんな楽器にも取り付けられる。貼り付けた場所の振動を電気信号にする。このピエゾのピックアップが拾うのは空気の振動ではない。つまり、音を直接拾うわけではない。エレアコはサドル下のピエゾのピックアップを使うことがほとんどである。
◎マイク:大別するとダイナミックマイクとコンデンサーマイクがあるが、どちらにしろ、空気の振動を電気信号に変える(ダイナミックマイクは電磁誘導を利用する)。
こうして考えると、ギターのピックアップは空気の振動である「音」そのものをとらえているわけではない。弦の振動やボディの振動をとらえるのである。それをギターアンプなどを通して空気の振動として聞くので、ギターの生音(空気の振動)とは異なるのである。
耳:音
コイルのピックアップ:磁性体の弦の振動
ピエゾのピックアップ:ボディのその場所の振動
マイク:音
電気信号に変えるために捉えるものが違うので、また、とらえて電気信号にしたものを音にそのまま変換しても本来の音とは違うので、また、個別のピックアップの特性もそれぞれ個性があるので、それを加工することが多い。プレアンプとかエフェクターとかで、電気信号を加工することが多い。低音域が弱いとか、高音域が耳障りとか、いろいろあるのでそれぞれに応じた処理をした方が聞きやすかったりする。
最も基本的な最も単純な形の回路は図1である。図1-Aはコイルの場合、図1-Bはピエゾの場合。アコースティックの場合、このようなものも実際にある。エレキの場合、トーンやボリウムがあるのが一般的である。
10-2 ボリウムについて
ボリウムは図2-Aや図2-Bである。メーカーによってもポット(可変抵抗)はいろいろである。一般的にはシングルコイルは250KΩ、ハムバッカーは500KΩである。また、カーブはBカーブが多いが、Aカーブもある。
◎ シングルコイルとハムバッカーについて
磁石の周りに1本の線をどんどん巻いていくのがシングルコイルである。しかしこれは、ノイズを拾いやすい。そこで、2つのコイルを合わせて使い、ノイズは逆位相になるようにしノイズをキャンセルするようにし、音の信号は倍になるように組み合わせたものが、ハムバッカーである。なので一般的にはハムバッカーはシングルコイルのピックアップに比べ、幅が広い。でもいろいろなバリエーションがある。ハムバッカーの場合、コイルから2本以上の線が出ることになる。グランドをどこにとるかとか、いろいろなバリエーションがある。
シングルコイルのピックアップもタップ(コイルの途中からも信号線を出す)をとったりで複数の線が出ているものがある。ハムバッカーの場合も2つのコイルなので、さらにいろいろな線が出ることになる。複数の線が出るということはそれをどうつなぐかも実にいろいろなバリエーションがある。この辺はあまりにもいろいろなので、ここではこれ以上触れない。
◎ カーブについて
可変抵抗はどのように抵抗を変えるかでいくつかの種類がある。Aカーブ、Bカーブのほかにもある。ヒトの感覚は指数関数的である。(例:音の大きさが10から11に変化したとき、その変化に気づくとする。では、大きさ100が101になってその変化に気づくか?つまり1の差に気づくのか、それとも、1.1倍になって気づくのか、どちらだろうか、ということである。1の差に気づくというのは1次関数的である。1.1倍の差に気づくのは指数関数的である。ヒトのいろいろな感覚は指数関数的であることが知られている。ウェーバーの法則。)可変抵抗で、1次関数的な変化をするのが、Bカーブ、指数関数的な変化をするのが、Aカーブである。
10-3 トーンについて
トーンはは図3-Aや図3-Bである。メーカーによってもコンデンサやポット(可変抵抗)はいろいろである。一般的にはシングルコイルは473(0.047μF)、Aカーブ250KΩ、ハムバッカーは223(0.022μF)、Aカーブ500KΩである。でも、本当にいろいろである。
コンデンサは一般的には、高周波は通るが、低周波は通りにくい。(直流は通らない。より低周波は直流に近いと考えればわかりやすい。) 回路的には、高周波の成分をグランドに落とすという回路である。どの程度をグランドに落とすかを可変抵抗で調節する。コンデンサの容量が小さいほど、より高周波側を通すことになる。つまりコンデンサの容量によって、音が変わる。またコンデンサの種類によっても音が変わる。
10-4 さらにいろいろな回路について
エレキギターはピックアップが複数あることの方が普通である。複数あるということはどのピックアップを使うか、あるいは、混ぜて使うか、などスイッチとかセレクターとかが必要になる。エレキギターでもサドルの下にピエゾピックアップを持つものもある。混ぜて使う場合、ミキサー回路が必要になる。また、トランスを使い、インピーダンスを変えることもある。また、プレアンプを使うこともある。エレアコではかなり多くのものがプレアンプを使う。さらに、アンプ・スピーカーを内蔵するようなものもある。つまりバリエーションは本当に多い。
なので、自作派とすれば、本当にオリジナリティーの高い楽器を作り出すことができるのである。
こういうことをいろいろやっていくとエフェクター作りもとても面白い。
10-5 アース(グランド)(接地)・シールドについて
身の回りに電気製品にあふれている。コイルのピックアップはノイズをよく拾う。ノイズ対策がないと、楽器は使い物にならないことも多い。ノイズ対策はシールドとアースが肝である。エレキギターの電気関係の部品がある場所はきちんとシールドされている。導電性の塗料で塗られていたり、薄い金属の膜が貼られている。アースも1点アースが大原則である。
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