ギター作り 雑感
楽器の構造、しくみについて考えてみた。
楽器には、実にいろいろあるが、大まかに2つの部分を考えるとわかりやすいと思う。A:音のもとの振動を作り出す部分、B:その振動に共鳴し大きな音にする部分、ギターなどの場合は、C:作った振動を共鳴部分に伝える部分も意識したほうがいいと思う。
アコースティックギターの場合ならば、Aは弦、Bはボディ、Cはサドルとかブリッジとか。
弦は素材によって音色も異なる。エレキギターであれば、金属弦でないと音が出ないが、(電磁誘導で音を取り出すため、磁場に影響を与える磁性体の金属が必要)、クラシックギターなどではナイロン弦も使われる。ウクレレとかも。三味線などでは絹糸、ガットギターはもともとは動物の腸、まあ、いろいろ。
この振動を共鳴させるのが、ボディ。一般的には大きいほど低音が出る。小さいほうが、高音が共鳴しやすい。ボディも振動を受け取り、ボディ自身も振動することになる。ということは、その空間的な大きさや形だけでなく、当然ながらその素材も音に影響する。
振動はなるべく損失なく、ボディに伝わるのがいいだろう。そのためには、なるべく軽い、小さいほうがいいように思えるが、強度的には大きくて丈夫なほうがいいだろう。三線のウマとかは軽くて小さい。それに比べれば、ギターのこの部分は大きくて丈夫である。
このようなことをあらかじめ考えておくと、ギター作りの大切な指針となる。
ヒトの声と楽器の構造との比較
ヒトの声をこの楽器のように考えてみることができる。声帯は音を作り出す部分。声帯から唇の先までの空間は声道。この2つをいろいろ調節して我々はいろいろな声を出している。声帯から出る音はブザーのような音だそうだ。それを声道でいろいろ調整し、「あいうえお、かきくけこ・・・」のようにするらしい。
酸素入りのヘリウムガスで声が変になるのはなぜ?
酸素入りのヘリウムガスで声が変になるのはなぜ?を考えてみた。
声を出すとき、声帯部分(音の振動を作る部分)は、声帯そのものを振動させるのだろう。とすれば、声帯そのものの固有振動といえるだろう。声帯そのものをいろいろと変えることで、その固有振動を変えるのだろう。ということは、振動数は声帯で決まるのだから、周りが空気だろうが、ヘリウムガスだろうが変化しないだろう。
一方、声道は、空気の通る管、物理で言うところの気管(ヒトの体の気管ではない)と考えられる。管楽器の管の意味での気管である。気管では共鳴する波長は波の反射と波の重ね合わせという現象の結果としての定常波の波長だから、その波長は空間の大きさ、形に依存する。そう考えると、気管の固有振動は、その振動数が決まるのではなく、その波長が決まることになる。
1波長(λ(ラムダ)[m])進むのにかかる時間が周期T[s]だから、波の速さvは、v=λ/T となる。また周期T[s]の逆数が振動数f[Hz]だから、v=λ/T=fλ である。
空気中での音速は v=331.5+0.6t 、tは温度℃である。温度により速さが変わる。(だから管楽器は、気温によって、ちょっとピッチが変わることになる。ので、調整が必要になる。)まあだいたい、340m/sくらいと考えておけばよい。
一方、酸素20%入りのヘリウムガスであれば、866m/s?(あるいは590~640 m/s?)、ヘリウムガス単体なら997m/sくらいらしい。
つまり音速が気体の種類によって大きく変化する。気管の長さで波長が決まる。気管が同じなら波長も変わらない、ので、速さが大きくなるということは、λは変わらず、vが大きくなるということだ。v= fλから考えると、vが大きくなるためには、fが大きくなるということだ。つまり、振動数が増えることになる。
だから酸素入りのヘリウムガスで、声が高くかわる(振動数が大きくなる)のだ!
ついでに、ヘリウムガスでなぜ音速が速くなるのかを考えよう。ヘリウムガスは軽い。軽いということは動きやすい。なので、同じように振動を与えても動きやすいから、音速が速くなると考えられる。
ギターの弦の振動について
弦が音を出す部分に関しては、基本振動の波長λと弦の長さLは直接関係する。λ=2Lとなる。波の速さv=fλより、振動数f=v/λ である。2倍振動なら、λ=L、3倍振動なら、λ=(2/3)L 、n倍振動ならλ=(2/n)L である。また、弦を伝わる波の速さvは、v=(S/ρ)^(1/2) 、(つまり(S/ρ)のルート) である。弦の張力S、線密度ρである。線密度ρは質量÷長さ、である。つまり弦の太さとか、弦の張力でも固有振動数は変わる。ギターを弾いているとき、弦の長さLを変えて、振動数を変えることになる。
管楽器の振動数について
管の場合の共鳴は、波長λ(ラムダ)は、管の長さをLとすると、
開管の場合、基本振動はλ=2L、n倍振動ならλ=(2/n)L
閉管の場合、基本振動はλ=2L、
n=2m-1 のn倍振動の場合 λ=(4/n)L=(4/(2m-1))L 、である。
弦の場合、弦を伝わる波の速さVは弦の性質で決まる。一方、管の場合、vは気体(空気)の性質で決まる。また温度に依存する。(空気ならば、v=331,5+0.6t 、tは温度℃である。)
1波長(λ(ラムダ)[m])進むのにかかる時間が周期T[s]だから、波の速さvは、v=λ/T となる。また周期T[s]の逆数が振動数f[Hz]だから、v=λ/T=fλ である。
v=fλ より、振動数f=v/λ となる。基本振動であれば、波長λは管の長さLに比例するから、振動数f=v/λを考えると、管が長いほど、振動数fは小さくなる。つまり低い音になる。管が短いほど高い音になる。
ギターのピックアップについて
エレキギターのピックアップは磁石にコイルを巻き付けたものである。普通の電磁誘導は磁石を動かすか、コイルを動かすかのどっちかである。しかし、ギターのピックアップは磁石とコイルをしっかりと固定してあるから、お互いの位置関係は全く変化しない。なのになぜ、音の信号を拾うことができるのか。エレキギターの弦は鉄である。強磁性体である。それがピックアップのそばで振動すると、磁界が変化する。その磁界の変化がコイルの誘導電流となって表れる。なので、ナイロン弦とかでは電磁誘導が起こらず音がしない。
このようなことを考えると、エレキギターの音は直接弦の振動を音の振動として受け取ることになる。
エレアコなどでは、ピエゾタイプのピックアップが使われることが多い。ピエゾタイプのピックアップは圧電素子である。圧力が加えられると、それを電圧の変化として取り出す素子である。圧電スピーカーとして出力素子としても使われる。圧電スピーカーはそのままピエゾのピックアップとしても使うことができる。サドルの下に入れるタイプのピエゾのピックアップは形の点でも自作は難しいと感じるが、圧電スピーカーはそのまま楽器に貼り付け、丸いタイプの貼り付けるピックアップとして使える。これはとても簡単で、有効である。いろんな楽器のボディに貼り付ければ、すぐにエレキの楽器になる。
ギターのボディの共鳴
今までいくつものギターとか、ウクレレとか、作ってきた。それらを通し感じたこと。
表板は、厚すぎると振動しにくいため、共鳴がいまいち。一方、薄いと弱い。変形する。ブレイシングは多いほど丈夫にはなるが、丈夫すぎると、振動しにくくなる。当然共鳴もしにくくなる。サドルやブリッジ、その裏の補強の材(表からは全く見えない)も、丈夫にしないと変形したり割れたりするが、丈夫にしすぎると共鳴しにくくなる。このように相反する要求がある。なんとかその要求のバランスをとることが必要である。その辺が大変なところであり面白いところである。
ギター作り、楽器作りの楽しさ
自分で作ることが楽しい。うれしい。自分の望みをかなえられる世界に一つのものができる。工夫が楽しい。こんな機能、あんな機能、こんな形、あんな形も実現できる。失敗しても、他人には迷惑をかけない。自分で何とかすればいいだけだ。結果が具体的にわかる。具体的な音として確認できる。
エレキギターは電気的な面白さも満載である。電磁誘導、圧電素子、雑音対策としてのシールド、アンプやスピーカー、トランジスタ、FET、オペアンプ、エレキギターとその周辺の機器は、いろいろな電気回路の見本のようだ。エフェクターは電気回路のテスト回路のようだ。面白い。
自分で思ったことを、自分で考えたことを、具体的なものにしていく過程は、ワクワクドキドキの連続だ。失敗し、悩み、工夫し、調べ、考え、手を動かし、まあ、ともかく面白い。
手作りオリジナルギターを演奏するのは、とてもいい。うれしいものだ。
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